キュレータードラフト2017に選出されました。

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 2016年7月27日、京都芸術センター主催の「キュレータードラフト2017」に、本企画「スポンテイニアス・ビューティー」が入選したことが正式に発表されました。合計30組という少なくない応募の中から、最終審査5組に残していただき、最後の1名に選んでいただけたことは、率直にうれしい反面、実現に向けていつも通りの不安は募ることになると想像できますが、それでも恐れず取り組んでいきたいと思います。

 「キュレータードラフト」は、京都芸術センターの隔年企画であった「展覧会ドラフト」をリニューアルした形で今年から始まり、今回が第1回目にあたります。リニューアルにあたり引き継がれた部分と、今回から新しく取り組む部分の住み分けなど、前例がないぶん手探りになる部分が想像できる一方で、今年の取り組みが少しでも次の第2回に繋がればうれしいと考えています。そしてなによりも、そのような初めての記念すべき場に、私の企画を選んで頂けたことは非常に光栄に思っており、身を引き締めて展覧会実現への取り組みをしてまいる所存です。

 さて、私自身については、キュレーションの経験はありますが、経歴にキュレーターと記載したことはありません。展覧会については常に「作家」という立場で関わってきました。けれども「整備された展覧会」での発表は本当に数えるほどしかありません。会場といえばいつだって、空き家だったり、ギャラリーの倉庫だったり、「まずは展覧会場をつくる」ということが最初の目標になっている場所でした。展覧会そのものをつくっていくことで、作品がつくられてゆくという経験の方が多い、というある種の不憫な、それゆえに「自由度の高い制作」をこれまで続けてくることができました。

 そして会場をつくる以前の作業、つまりは運営母体をつくることや、そのための予算を獲得することや、広報のデザイン、記録の撮影、そもそもの企画書、そういったすべてを乗り越えて、そして会場構成をした上で、ようやく最終的に自分の作品を発表してきました。そんなとき、もはや作家としての自分なんてどうでもよくなっている自分の影をこれまでに何度も見てきました。少なくとも、全てを準備した最後に作品として発表してきたものは、自然と「作家性の排除」を目指した軌跡のようなものだったのかもしれません。

 今回の「キュレータードラフト」は、まさに自分自身のそのような経験、つまりは作品以前の大量の下ごしらえ、言ってしまえば「本来不必要であったはずの筋肉」を最大限に動かす機会だと考えています。キュレーションありきの現代美術の社会接続の中で、圧倒的にキュレーターからの需要がなかった私は、その技術を自分で考えながら習得することでしか、社会の中で作品を発表する機会さえ得ることができなかったと言えます。まがいなりにも得てきた「キュレーションという技術」を一度総まとめし、そこにはどのような可能性があるのか検討しようと思ったからこそ、今回の「キュレータードラフト」に応募した経緯があります。

 今回の企画「スポンテイニアス・ビューティー」では、私がキュレーションを行い「作家のいない展覧会」を提案しています。私はこれまでコーディネーションのような作品をつくっていますが、その作品の作家としてクレジットされることや、そもそも作品なのか、という点は議論しづらい部分だったという実感があります。今回の企画も「結果的にはただの個展になってしまう」のか、それとも「作家のいない展覧会」という言葉がその言葉どおりに効果をもち、作品とは何か?作家とは誰か?という道筋から、キュレーティングや展覧会そのものについての再定義ができるのか、正直にいうとどうなるかわかりません。

 審査においては、審査員との面接を終えた時点での私自身の感想は、「企画はOKだけど、立場でNGがでるかもしれないなぁ」というものでした。なぜなら「あなたはキュレーターなのですか?」や「これからキュレーターとしてやっていくのですか?それともアーティスト/キュレーターとしてやっていくのですか?」という質問に対して、一生懸命、論点をずらした自分を確認していたからです。
 ただ、それはこのコンペに応募した時点ですでに覚悟していた部分であり、それで負けるなら諦めきれる部分でもありました。だからこそ私は「作家よりも作品」「キュレーターよりもキュレーション」という部分に論点を絞り、立場の問題ではなく技術の問題だという方向でプレゼンテーションを押し切ったのだと思います。

 結果的に入選させていただき、実践の機会を与えていただいた、京都芸術センターおよび審査員の難波祐子氏には、本当に感謝しております。今回の企画が「立場」の問題も含めて不確定なことが多いこと、だからこそ可能性があること、その全てを理解したうえで後押ししてくれたことへの感謝から、動き始めていきたいと思います。