プロジェクトマップを公開しました。

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 今回のプロジェクトでは、展覧会の実現のために、京都をさまざまな角度から取材することを出発点にしようと考えています。それはベースとなる京都芸術センターについてはもちろんのこと、その周辺や京都市内の広域に範囲を設定することで、すこし時間をかけながら地図を製作しようと考えています。

 おそらくそれは「フィールドワーク」とか「リサーチ」とか言ってしまえば、ひとつのプロジェクトにもなりうるのですが、そのようなたいそうな着地点については今のところ目指してはいません。まずは自分自身で京都の土地勘を養うことの軌跡を自分自身知っておきたい、という部分が最も大きく、もしこれらの調査についてアウトプットが起こりえるときにすぐに参照できるようにあらかじめ箱だけ用意している部分があります。

 そもそも「アーティストのいう『リサーチ』ってなんなんだ?」という部分はかなり曖昧なものです。文化人類学者のフィールドワークや、経済学者の市場調査といった、一般的な「リサーチ」や「サーベイ」と比べると、客観的な情報が随分と少なく、そこら辺を散歩しただけで「リサーチ」と言い切ってしまうケースだってあります。

 ではなぜそのようなリサーチが成立してしまうのか。それは、最終的な成果物が「作品」という「曖昧さ」に対して寛容なものであることに加え、決して定型のフォーマットに落とさないどころか、定型フォーマットを最後まで嫌う傾向があるからではないかと考えています。最終の方法とメディア(論文にする、企画書にする、グラフを用いてわかりやすい比較をつくる、といった部分)に重きを置く部分は、学術的なリサーチも作品のためのリサーチも変わりないと思うのですが、「リサーチの結果によって、最終の方法とメディアが再定義される」という不可逆性こそ、アーティストのリサーチを曖昧なものや嘘くさいものに見せている部分だと考えられます。最初から自分の学術的な視点などに期待せず、なんならリサーチだと言わずに「取材」だと言い切ってしまう方が、制作の自由度を高めるのではないかと、私なんかは思ってしまいます。

 

理由はどうあれ、コミュニティと共に活動したいと思うアーティストが、じゅうぶんな情報を得たうえで、どのように意味のある交換(エクスチェンジ)を行い、体験を築き上げるかを決定するとき、さまざまな分野(社会学、言語学、エスノグラフィーなど)から集められた知見は、大いに役立つだろう。その目的は、アーティストをアマチュアのエスノグラファーや社会学者、教育者に変えようというのではなく、自分たちが関わる分野の複雑さを理解し、異分野のツールを学び、芸術の肥沃な土壌でそれらを用いることにある。

「ソーシャリーエンゲージドアート入門」
著:パブロ・エルゲラ 
訳:アート&ソサイエティー研究センター SEA研究会)
発行:株式会社アートフィルム発行
2015年3月25日初版発行

 

それは例えば、言語についての論文を書く際に、『言語のリサーチをしていたら、新しい言語をつくることでしかそのリサーチを続けたりフィードバックすることができなくなり、最終的に言語学者が発音できない論文になっているような状態』なのかもしれません。「新しい言語をつくることでしか・・・」という部分におけるある種の諦めが起きたときこそが、その方法(=リサーチ)を「異分野のツール」とみなしている瞬間であり、もっと言えば政策上のジャンプが起きるのはこの瞬間です。そのジャンプこそある人にとっては例えば「新しい言語をつくる」ことなのかもしれません。今回の展覧会でのキュレーティングにとって、そのジャンプはどこで起き、どのようにランディングができるのか。加えてそのジャンプに必要だったホップステップとアプローチはどこにあったのか。それらを検証するツールとして、まずはマッピングから始めたいと思います。